万葉のうた 巡礼

万葉集と坂出市

日本最古の歌集である『万葉集』には4500首以上の和歌が納められています。歌の形式が色々であれば、その読み手も様々であり、身分や地域を超えて、秀逸な和歌が記録されています。

多くの歌が収録されてますが、四国沿岸地域が舞台となる歌は少なく、香川県では2つを数えるのみで、そのどちらもが坂出市で詠まれたと考えられています。

ここでは、坂出で詠まれた万葉の歌とともに、歌に詠まれた情景や想いを紹介します。

軍王の歌

讃岐の国安益群(あやのこおり)に幸(いでま)しし時に 軍王(こにきしのおおきみ)の山を見て作る歌

霞立つ 長き春日の 暮れにける
わづきも知らず 村肝の 心を痛み
ぬえこ鳥 うらなけ居れば 玉だすき
かけのよろしく 遠つ神 わが大君の
行幸の 山越す風の 独り居る
わが衣手に 朝夕に 返らひぬれば
丈夫と 思へるわれも 草枕
旅にしあれば 思ひ遣る たづきを知らに
網の浦の 海人娘子らが 焼く塩の
思ひそ焼くる わが下ごころ
(巻1-5)

反歌

山越の 風を時じみ 寝る夜おちず
家なる妹を かけて偲ひつ
(巻1-6)

柿本人麻呂の歌

讃岐の狭岑島に 石の中に死れる人を視て
柿本朝臣人麻呂の作れる歌一首あわせて短歌

玉藻よし 讃岐の国は 国柄か
見れども飽かぬ 神柄か ここだ貴き
天地 日月とともに 満りゆかむ
神の御面と 継ぎ来る 中の水門ゆ
船浮けて わが漕ぎ来れば 時つ風
雲居に吹くに 沖見れば とい波立ち
辺見れば 白波さわく 鯨魚取り
海を怨み 行く船の 梶引き折りて
をちこちの 島は多けど 名くはし
狭岑の島の 荒磯面に いほりて見れば
浪の音の 繁き浜辺を 敷栲の
枕になして 荒床に ころふす君が
家知らば 行きても告げむ 妻知らば
来も問はましを 玉桙の 道だに知らず
おほほしく 待ちか恋ふらむ 愛しき妻らは
(巻2-220)

反歌二首

妻もあらば 採みてたげまし 佐美の山
野の上のうはぎ 過ぎにけらずや
(巻2-221)

沖つ波 来よる荒磯を 敷栲の
枕とまきて 寝せる君かも
(巻2-222)